歴史の中でマグロは、日本人にとってどんな存在だったのでしょうか。
マグロは昔から広く海岸沿いに住んでいる日本人が、消費していたものと考えられています。中世以降武家や公家などの支配階級にとっては、マグロのような赤身の魚はタイやヒラメのような白身の魚と比べて著しく価値が低いものでした。
マグロが武士階級にまで広く食べられるようになったのは、歴史的には江戸時代の後期といわれています。江戸時代の前期にはマグロは大きさによってメジカ・マグロ・シビと分けられ、特に脂がのったシビは下魚とされ評判はとても悪いものでした。かつおと比べてもかつおは勝つ魚に通じますが、シビは死日を連想させ縁起が悪かったためとも言われています。
マグロはようやく江戸時代後期になって名前がマグロに統一され、武士階級も食するようになりました。特に最近では日本人がことさら珍重するトロは、戦前までは赤身と比べて人気がなく寿司だねにはなりませんでした。わずかに関東でねぎま鍋に大トロが利用されていたにとどまるようです。
マグロは古くから日本人にはなじみの深い魚であったものの、歴史的に下魚としての扱いを受けどちらかというとカツオのほうが人気がある魚でした。
古くから東京の人は関西と比べてマグロをよく賞味していましたが、大トロは刺身や寿司ネタとしては決して好まれてはいませんでした。その頃のマグロの通称はねこまたぎと呼ばれています。このねこまたぎの意味の由来は、猫もマグロをまたいで通るぐらいにうまくない魚といった意味です。今の日本人にとっては、とても考えられない話ではないでしょうか。