青森県の津軽海峡で水揚げされる天然の本マグロは、黒いダイヤとまで呼ばれる高級食材です。特に本州最北端の大間町でとれるマグロは、「大間マグロ」のブランドネームで幅広く知られています。
漁法は延縄漁も行われていますが、小型の漁船に漁師が一人で乗り込む勇ましい一本釣りのイメージをもつ方が多いでしょう。大間町が面する漁場の津軽海峡は18キロと幅が狭く、港と近いため水揚げされたときマグロは生きている状態です。この高い鮮度がおいしさの理由の一つでもあるのです。
現在では高級食材として知られる大間マグロですが、その歴史はそれほど古くありません。かつては地元ですらマグロは、ほとんど流通していませんでした。寿司屋でも身の色合いが濃く、くすんで見えてしまうことから寿司ネタには不向きと言われていたのです。
大間のマグロが知られるようになったきっかけは、2000年に放送されたマグロ漁師の父親が登場した連続テレビドラマです。日本全国に大間町が知られたことから、翌年の2001年からマグロの解体ショーを目玉に町おこしがおこなわれます。
そして一本釣り漁師がテレビで取り上げられ話題になったのは2003年頃、初競りで大間産のマグロが最高値をつけて注目されるようになったのは2006年頃、大間マグロブランドの歴史は15年ほどなのです。
大間のマグロは生ならではの食感と濃厚な旨味が特徴で、その味は舌が肥えた食通をも唸らせます。
しかし、いつ釣れるかわからないため、冷凍のように安定して供給されないのです。なかなか食べられない幻の逸品として大間のマグロの価値が高まり高級食材の地位を確立したのは、ほんの数年前のことなのです。