マグロは日本人にとって欠かせない食材です。寿司や刺身をはじめ、適度な弾力のある食感と食材の味と香りを壊さない風味からさまざまな調理方法とレシピがあります。
近年では、健康食ブームから日本国内だけでなく、海外でも愛好者が増えています。需要が伸びることや国内だけでなく海外においても消費が増え続けていることは喜ばしいことではありますがその一方で、拡大する需要を満たすべく乱獲がなされた結果、資源の枯渇に瀕しているとの学術報告もあるのが現実です。
マグロのうち太平洋を回遊しているクロマグロは、特に資源量の減少が顕著な種類です。これまで人類は食用となる生物を捕獲して得てきましたが、乱獲による個体数の減少から家畜として個体数を確保する手法を手に入れました。同様に漁業においても、養殖することで天然資源の確保と食材の安定供給の実現がなされました。
しかしながら回遊魚であるマグロは、必要とされる生簀が巨大化してしまうことと、産卵から成長する過程が全て熟知されなかったので、養殖化は困難であるのは周知の事実です。
2002年に近畿大学でクロマグロの完全養殖が実現され、養殖で育った親の受精卵から成魚にまで育てる道筋が立ち、道が開けました。この快挙により、危惧されてきた資源枯渇に終止符を打つことができるのと同時に、遠方まで捕りに行く必要がなくなり流通の安定化が期待されています。
大学では、近大マグロのブランド化を図り、総合商社との連携により養殖の量産化事業を展開するに至っています。マグロも捕る時代から育てて収穫する時代に移りつつあります。