マグロは漁獲までのプロセスに着目して分類すると、主に太平洋やインド洋といった海域に生息しているものを漁獲した天然物と、稚魚もしくは卵の状態から一定期間育ててから獲る養殖物の2種類に分けられます。日本では養殖マグロは天然物と比べて格下と見られがちですが、度重なる手法の改良を経て現在は天然マグロと遜色ない味わいになっています。
そんな養殖マグロの歴史が日本においてはじまったのは、水産庁が世界に先駆けてマグロ類養殖技術開発企業化試験をはじめた1970年といえます。この試験は水産庁の有用魚類大規模海中養殖実験事業の一つとして国内5箇所の研究施設で行われました。3年間にわたって行われたこの試験では有益な成果を得ることはできませんでしたが、近畿大学水産研究所は事業終了後も研究を続け、数々の改善を経て2002年に世界で初めてクロマグロの完全養殖に成功しました。この歴史的な研究成果は大きく報道され、2004年には近畿大学で立ち上げた関連会社によって初めて市場に出荷されました。
一方、民間企業は1980年代までは大手水産加工会社が生産試験を開始したくらいで目立った動きはありませんでしたが、1990年代に世界で急激に企業の参入・投資が活発化するのにつれて日本国内でもマグロ養殖業が急成長しました。2017年の時点では、全国で95経営体、計177箇所でクロマグロの養殖が行われており、約24万7千尾が全国に出荷されています。